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職場で懇意にしている女性から、会社をやめると突然、連絡がきた。

まったくの寝耳に水であった。

そんな素振りはまったくなかった。

慌てて返信した。

食事に行く約束であったが、まだ一度も行っていない。

金曜日で仕事上がりなので、私は既に食事は済ませていた。

ワインを一瓶空けて、だいぶ出来上がった状態であった。

偶然にも家が近所であった。

待ち合わせ場所は近所のコンビニ

近くのコンビニの前で待ち合わせをした。

1月末なので、夜は冷える。

なかなか来ない。

スッピンでも良いから早く来てほしい旨を伝える。

私は既にアルコールを飲んでいるので運転はできない。

10分くらいで彼女が来た。

彼女の黒のN-BOXの助手席に乗り込んだ。

このN-BOXは離婚した前のダンナに慰謝料代わりに買ってもらったのだとか。

彼女は夕飯は、まだだという。

空腹なので、どこかで食事をしようということになった。

女性が運転、男が助手席

思いもしなかった形での深夜のドライブデート?

彼女が運転しながら、会社を辞めることにした経緯を話しはじめた。

私は助手席で夜の街を眺めている。

私は酔っていたので、全然、彼女の話が頭に入らなかった。

それで、せっかくなので気の利いたオシャレなお店で食事しないか?

と提案したのであるが、会社の人間に見られる可能性があるお店には行きたくないとのことで、一時間くらい市内の幹線道路をぐるぐると走って店を探した。

同じ道を二回くらい通過したことは、酔った私の頭でも理解出来た。

「このクルマ、灰皿ないのよね」

と言いながら、彼女は吸い殻を窓から放り捨てた。

会社では、タバコは一切吸わない女性であるがプライベートというか、自宅では一日に数本吸うのだとか。

夜のご飯はラーメン屋?

同じ道を何度も走ったりして、いい加減早く決めてほしかった。

別に誰かに見られても良いではないか、と思ったが彼女は絶対にイヤだという。

そんなときに目に入ったのがお互いの家の近くにあるラーメン屋である。

場末の昭和のにおいが残るラーメン屋である。

仕方なく?二人でその店に入った。

彼女は、「つけめん」私は、「おでんとビール」を注文した。

お互いの家から、すぐそこにあるのだから最初から、この店にしておけば良かったのかもしれない。

しかしながら、直ぐに店に入ったら私が助手席に座ってドライブを楽しむこともなかったであろう。

会話の中身は?

ラーメン店では、お互いの子供の時の話や友人、会社での人間関係などについて話した。

「会社では、あまり見せない表情ね」

とか、

「こんなに良くしゃべる人だとは思わなかった」
(会社では必要以上のことは話さないようにしている)

とか、

「酔うと関西弁になるのね」
(私は昔、関西に住んでいた)

とか言われた。

キスしたくなるけど告白なし。くっつくけど何もない

楽しい時間は、あっという間に過ぎ去っていく。

時計の針は、12時を目指し始めた。

ラストオーダーの時間になりそうなので店を出ることにした。

支払いは、もちろん私がした。

5千円札を出してお釣りをもらった。

クレジットカードも使えないような店である。

私は、まだ酔いが残っている。

再び、彼女のN-BOXの助手席に乗り込む。

せっかく二人きりになれたのである。

店の駐車場は暗くて人影はない。

彼女と、くっつくくらいの距離にに近づこうとしたら、

「ちかい、ちかい、ちかい」

と、言いながら、猫パンチのような感じで手を振り払われた。

キスや告白どころではない。

何か汚いものでも振り払うような仕草であった。

しかしながら、目は笑っていた(と思う)。

(と思う)と書いたのは後日談があるからである。

クルマで家の近くのピザ屋まで送ってもらって、その日は終わった。

この女性、趣味が料理だという。

自分のカフェをやりたいくらいだという。

手の込んだ料理の写真を見せてくれたり、私の似顔絵を描いて見せてくれたりしたが、結果からいうとダメであった。

近づこうとして拒否されたときに、気づくべきだったのかもしれないが、電話やLINEは、ほぼ毎晩していて、相手の女性も悪い感じではなかったのだ。

勘違いしてもおかしくはないと、私は思う。

ほろ苦い想い出であった。

失恋すると海が見たくなる。。